2010 イエティ国際スノーシュー招待大会 於 バンクーバー 
遠征報告

スノーシューイングを冬季オリンピックの新競技種目候補として世界にアピールすべく、バンクーバーで冬季オリンピックと同時期2月27日に開催された大会「World Snowshoe Invitational」に、日本スノーシューイング連盟は国際アマチュア・スノーシュー競技連盟からの招聘をうけて選手とコーチ各1名を派遣いたしました。ご協力、ご協賛いただきました皆様に深くお礼申し上げますと共に、下記の通りご報告いたします。

【特別協賛】池の平温泉観光協会、池の平スノーシューイングガイド協会、アメア スポーツ ジャパン株式会社(サロモン)(敬称略、順不同)

【派遣】以下2名を派遣。選手:小出徹(チームサロモン所属;2009年の「全日本山岳スノーシューイング・レースin妙高」の優勝者)コーチ:原田克彦(日本スノーシューイング連盟会長)

【会場】雪不足から会場が急遽Grouse Mountainに変更になった。Grouse Mountain標高1,250mはバンクーバーの北、車で15分ほどの所に位置する。標高274mの所にあるSkyrideと呼ばれる100人乗りのロープウエーの駅で大会受付を済ませ、レースナンバーを受け取り、Skyrideで一気に標高1,128mの頂上に登る。頂上駅傍のPeak Chaletという建物が着替えなどのできる選手たちの控え所だ。天気が良ければバンクーバーが一望できる本格的なレストラン、喫茶室、ショップ、大画面ディスプレーのシアターなど山頂とは思えない施設を備えている。この前に開けている尾根上の狭い高原が会場。(詳細は同山冬季地図を参照下さい。)Grouse Mountainは北八ヶ岳のピラタス蓼科リゾートに形状的には似ているが、はるかに進化したリゾートで、スキー、スノーボードだけに依存しないハードとソフトが融合、一体化して一つの有機的システムとなった自然のテーマパークと言える。

【参加国・選手】アメリカ、スイス、フィンランド、イタリア、フランス、ニュージーランド、カナダ、日本の9カ国から、各国の主要大会のチャンピオン、マウンテンランニングの国際級の選手、スノーシューイング専門チームとしても最強のアメリカのATLASチーム、フランスのTSLチームが参加し、20歳から39歳のオープンクラスは世界最高レベルの戦いとなりました。

【参加者数】下記クラス別表を参照下さい。小雨降る悪天候のため一般参加が少なく合計で86名。内40名(男子33名女子7名)がオープンクラスだった。

年齢
男子
女子
10〜19才 M1019
1
F1019
1
20〜39才 M2039
33
F2039
7
40〜49才 M4049
13
F4049
13
50〜59才 M5059
7
F5059
5
60〜69才 M6069
6
F6069
0
   
60
 
26

【コース】以下添付のコース図小出選手の感想文、主催者からのデーターに基く考察。Grouse Mountain山頂の高原には4本の常設スノーシューイング・コースがあり、一本は隣り合わせのDam Mountain標高1,371mの頂上付近まで延びている。今回の大会のオープンクラスコースはこれら4本のコースを組み合わせた6.5Kに独自のシングルトラック1.5Kから2.0Kを加えた8.2K。雪不足で開催地急遽変更した経緯もあり、10Kよりかなりショートしていた。コースの難易度であるが、妙高大会が標高差約700mのほぼ一方的登りと下りであるのに対して、本大会の絶対標高差は330mであるが、かなり起伏の多いコースとなっており累積標高差は500mを超えると推計される。第1ピークまでの沿面距離1K当たりの登り率は、妙高の約80m(スタート地点から約8.3Kで約663m)に対してバンクーバー大会では約74m(同約3.5Kで約260m)と妙高大会のほうがやや急峻である(正確な断面図が無いためあくまでも推測値である)。しかしバンクーバー大会は、この第1ピークに達するまでに小刻みな上り下りがあり、さらにその後第2、第3のピークと続き、距離は短くとも頻繁なギアチェンジが必要であり、左右への振りもあり、難易度はかなり高いと言える。この背景にはコース作りのコンセプトそのものの違いがある。日本では競技を普及させるために、より多くの人を惹きつけるために、楽しませるコース作りをしているが、競技が定着している欧米では競技性をより重視したコース作りをしており、バンクーバー大会のコースは海外のトップ選手にとっては平均的なコースであったと考えられる。

【小出選手の戦績】オープンクラス33名中10位。タイムは56:31、トップのタイム差は5:35(9.9%)。世界的にトップ選手が集結していたこと、欧米の選手が慣れている中距離でしかも8.2Kと距離が短かったこと、不慣れなコースコンセプトのコースであったことを考えると善戦であったといえる。この10%の差を詰めるためには、体力的なトレーニングだけではなく、欧米の選手がトラック競技で慣れている圧雪コースに慣れること、無雪状態と雪上での走りの違いを研究、体得すること、靴をビンディングに直接固定するなど装備の改善などが必要となる。連盟としても情報面でできる限りサポートしていきたいと思う。

【大会運営】MCも入り、雪男の縫いぐるみを着たマスコットが走り回り、雰囲気は賑やかであったが、北米では良く行われているようにタイミングも含めてイベントサポート会社に丸投げしているようであった。スタッフの配置は、スタート地点に2名、コース上に8名であったが、誘導が主任務で関門等は特に設置されておらず、小出選手の報告にもあるようにショートカットしようとすればできる状況であった。関門については電子的に管理されていた可能性もあるので主催者に確認中である。安全確保体勢については、救急ステーションがコース上とスタート地点に各1箇所、スイーパーが1名。それぞれOFA level 1とのことであった。表彰式では各クラスの上位3名にメダルと大会のラベルを貼った地ビールを贈呈し、賞品は抽選で順位に関係なく贈る方式で、参加者も十分満足しており、参考になった。

【国際スノーシューイング連盟】主要国の組織代表の会談がもたれ、IOCの基準に適合する定款、組織案がスイスの組織から提示され、現在の国際アマチュア・スノーシュー競技連盟を再組織することになり、執行委員会を設立した。執行委員会は、取敢えず欧州代表でもある、スイスと米国、日本の3ヶ国代表で構成することになった。最終的には7カ国になる予定だが、この執行委員会で電子会議を継続し、定款の最終案、国際競技規則案の作成と制定作業を行っていく。日本スノーシューイング連盟としてはこの一連の動きの中でイニシアティブをとっていくためにも、全日本スノーシューイング・グランプリシリーズの発展を図ると同時に、海外大会への積極的な選手派遣を図って行きたいと考えています。つきましては、関係各位の皆様には引続きご協力、ご支援の程、宜しくお願い申し上げます。